沈みゆく星に澄む − memorandum
- yuko kano
- 1月2日
- 読了時間: 3分

−−−−−−−
見えないものを抄う
見えていないものを抄う
微かに見えているものを抄う
生と死。
その両方の世界が存在していて我々はその境界にいる。
光を見ること。
そこには見えるというよりもむしろ見えていると仮定するという視覚的な疑問が存在する。
−−−−−−−
星影
今私たちが見ている星の光は過去に放たれたもので、星の光を見る時我々は過去を見ているということになる。星影を見るとき我々は、現実と夢の世界を行き来しながら、それでも現実的な出来事としてその光を理解しようとする。
過去の光をすくう
何かモノを見る時、そのものの輪郭を視覚的に捉えてはいるが、それと同時に過去を見ているともいえる。ものには過去の蓄積が堆積岩のようには宿り詰まっていて我々はそれを見ている。物を使うのではなく物を見ること。その色を形を全てを。
透明な物体
布の中に包まれた透明な物体を眺めてみる。じっと見つめているとそれが命を失った死体のように見えてくる。その内側には、まだ魂なるものがかすかでも存在しているのだろうか。この世とあの世の中間領域に宙ぶらりんなものとして存在しているものに似ている。葬儀は、命を失ったものの体と魂の乖離の儀式であり、また我々と死者を分け隔て、そのものを死者として崇める行為である。
死者に花を捧げる
死者へ花を捧げるという行為。その弔いは古代のネアンデルタール人も行っていた。
死体を埋葬する
どこか遠くに行ってしまった魂を、その死者の体を葬る。土に埋め、火で燃やし、山へ葬り、見えないものとする。死者を埋葬することで、今ここには存在しない魂を肯定する。
布で包む
布で何かを包むということはそのものの内側に新しい領域・世界を作るということである。布で包まれている内側のものに我々は触ることができず、見ることでしかその存在を肯定できない。布の内側には他界が宿っていて、その場所は宇宙的とも言え、その大きさや密度を測ることはできない。また、布で何かを包むという行為はそのものをきちんとした形で葬るようなものなのかもしれない。
白について
白の文字の源は白骨化した人間の頭蓋骨の象形文字である。人間の体から白という色を見ることができるのは死後である。江戸末期の日本の弔いの色は白であり、白装束、白屏風、など葬儀の空間には白が多用された。また、白は再生の象徴であり、五行説で白は「西」「金」を表す。ヒンドゥー教では人が亡くなった時、白布でその体を纏う。その時、白い布は次の世界への橋渡しをする媒体となる。染色では漂白するという過程を踏むことにより白を得る。
黒について
闇の色。死の色。陽が落ちて光を失ったとき暗黒の黒が生まれる。鈍色(にびいろ)という色がある。その色を得るには矢車という樹の実の染料で染め鉄の媒染剤で発色させる。平安時代から見られる色名で、近しい人に不幸があった時、喪に服する気持ちをこめて着用した色である。
灰について
全てのものは灰から生まれて灰に死にゆく。無機物の状態で存在し白になりゆく過程そのもの。また、人も死ぬと骨になり骨灰となる。染色においてシルクの光沢を出す方法に灰汁洗練という方法がある。灰汁には強いアルカリ成分があり、これにより生糸のタンパク質を除く。